平成30年度交通安全ファミリー作文コンクール最優秀作品の発表

平成30年度交通安全ファミリー作文コンクールの最優秀作品が発表されました。

このコンクールは昭和54年度から実施しており、家庭や学校、職場、地域等において交通安全について話し合ったこと、また、これらを通じて思ったこと、感じたことを作文を通じて国民の皆様が共有し、具体的な交通安全活動の実践につながる取り組みとして続いてまいりました。

今年度も、小学生から高齢者まで幅広い年代の方から12,943点もの応募があり、「小学生の部」「中学生の部」「高校生・一般の部」の各部門の最優秀作には、本年1月17日に開催された第59回交通安全国民運動中央大会において内閣総理大臣賞が授与されました。

平成30年度交通安全ファミリー作文コンクール応募要領

(警察庁監修 平成30年度交通安全ファミリー作文コンクール優秀作品集から)

主催 警察庁
一般財団法人 全日本交通安全協会
公益財団法人 三井住友海上福祉財団
一般財団法人 日本交通安全教育普及協会
後援 内閣府
文部科学省
協賛 全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)

小学生の部 最優秀作 内閣総理大臣賞

茨城県下妻市立上妻小学校 5年

龍道 彩音(りゅうどう あやね)

お互いに守ろう交通安全

最近、登校中の通学班に自動車が突っ込み小学生が巻き込まれる事故が多発しています。

交通事故のニュースを見るたびに、お母さんは、
「いくら交通ルールを守っていても、事故に巻き込まれる事があるのだから、だろうではなく、かも知れないと考えて、目配り気配りを忘れずに行動しなさい。」
と言います。私は頭の中で、「またおおげさな事を言ってる。そんな事を言われなくても分っているし、それに事故なんて滅多におきないよ!」と思いながら返事をしていました。

ある朝、いつものように通学路の十字路の信号を確認して横断していると、突然、車が私達の班に突っ込んで来ました。次の瞬間、「ギギギー」と、けたたましいタイヤのスレる音がなりました。私は、「あっぶつかる! 逃げなきゃ!」と頭に浮かびましたが、怖くて足がすくんでしまい、その場で目をつぶる事しか出来ませんでした。そして、「あっ私達死ぬのかも?」と思った瞬間、あの時のニュースが頭に浮かびました。「私にかぎって、事故に巻き込まれるなんてないだろう」と思う、これこそが「過信なのだ!」と気付きました。そして、今まで他人事のように思っていた自分が情けなく悲しくなりました。いつ自分の身に起こってもおかしくない事なのだと分かりました。

そして数カ月後、通学班の子達と下校していると、低学年の子が水筒を落としてしまい、車道側に転がった水筒を追って飛び出そうとしました。私は、
「危ない! 飛び出したらダメ!」
と低学年の子の手を引いた次の瞬間、「バァン! グシャ!」と凄い破裂音がして、一瞬で水筒がぺたんこに潰れてしまいました。私達は、驚いたのと同時に車の恐ろしさを目の当たりにして、その場に立ち尽くしていました。

運転手さんは、そんな私達を無視して、何事もなかったかのように行ってしまいました。もし低学年の子が飛び出していたらと思うと背筋がゾッとします。毎朝、お母さんが、「だろう」ではなくて、「かも知れない」と考えて、気をひきしめて行ってらっしゃいと言う意味が身に染みて分かりました。

私は、お互い相手を思いやる心と時間に余裕を持ち、皆が交通安全を心掛けるようにすれば、悲しい事故が少なくなると思います。

そして、運転手さんにお願いがあります。時間がなく急いでいたのかも知れませんが、私達歩行者を、ご自分の家族と考えてみて下さい。あなたの家族に同じ事をされたらどう思いますか? 私達も、「目配り」「気配り」をして気を付けますので、運転手さんも、「安全運転」を、よろしくお願いします。

中学生の部 最優秀作 内閣総理大臣賞

宮城県名取市立みどり台中学校 3年

鈴木 舜(すずき しゅん)

孤立をなくす取り組みを

「父さんはまだ若いし、認知症でもないけれど、念のため眼科に行こう」

僕にはまだ七十歳の元気な祖父がいる。大きな病気もないが、最近視力が低下し車の運転が不安だという。医師をしている父に聞いてみるのが一番と考えたのだろう。二人で話し合っている声が聞こえてきた。

高齢者の運転事故が増加していることは、僕も新聞やニュースを見て知っている。認知症の患者さんは車を運転してはいけないのか、率直な疑問を父に尋ねてみた。

記憶など物事を適切に判断する脳の能力、認知機能と呼ぶらしいが、これらが一定基準以下に低下し、改善する可能性が少ない状態になった時、認知症の診断をすると教えてくれた。車の運転は常に集中力を必要とし、瞬間的に状況判断をしなければならないため、認知症が存在すると、安全に運転する事が困難になる場合があるという。その際、医師は運転免許更新の可否について診断書を書く。

交通事故は人の命に関わる。リスクがあるなら、認知症患者の免許証を禁止にするべきではないか。安易な返答をした僕は、高齢者が直面する切実な状況を知る事となった。

問題は他の交通手段が発達している都市部ではない。子供や孫達が家から離れ、高齢化が進む不便な過疎地域である。例えば八十歳の夫婦が二人で住んでいて、妻は病院通いを欠かせない状態だとしよう。夫は車の運転が可能だが、物忘れの進行は、年齢を重ねる度に実感する。免許証もそろそろ返納したい。だが、自分が車を手放したら、妻を病院に送迎できなくなる。それどころか、生活に必要な食材や日用品を買いに行く事も不可能だ。運転しなくなったその日から、夫婦の生活は破綻してしまう。介護送迎サービスを使うにもかなりのお金がかかり、毎回は使えない。

このように、運転は辞めたいが、生きていく上で簡単に辞められないという患者や家族が、病院にたくさんいるというのだ。事態の深刻さは僕でも十分理解できた。

認知症患者や高齢者が、運転免許を返せばそれで解決するという簡単な話ではない。孤立を深めないように、地域で支える必要がある。当事者だけの責任にしてはいけない。無理をしてまで運転を続ける理由を、皆でもっと真剣に考え行動するべきだと思う。

乗り合いバス「なとりん号」が、僕の街を走っている。主に高齢者が使うのだが、市民であれば安い料金で誰でも利用可能だ。空席が目立つが、より多くの人達が積極的に利用すれば、高齢者が利用しやすい時間に合わせて、集中的に運用できる事を運転手さんが教えてくれた。正直、乗るには少し恥ずかしいが、こんな僕にも出来ることがあるのだ。小さなことかもしれないが、その積み重ねが地域と交通安全を支えるのだと思う。

高校生・一般の部 最優秀作 内閣総理大臣賞

宮崎県延岡市

星野 有加里(ほしの ゆかり)(教員)

黄金色(こがねいろ)の背中

「今日、免許を返納してくるよ」

朝一番、きっぱりとした口調とは裏腹な淋しげな瞳で父が告げた時、寝惚け眼(まなこ)の私は一瞬で覚醒した。珈琲を飲んでいた母も吹き出さんばかりに目をまん丸く見開く。この数年、母と私が待ち続けた父の台詞だったから……。

車が好きで、運転が大好きな父。幼い頃から父の運転で家族旅行に沢山出掛けた。私が成長し、免許を取って運転し始めても、父は変わらず家族旅行でハンドルを譲らなかった。

「俺は、免許の返納なんか一生しないぞ。免許を奪われるぐらいなら、死んだ方がマシだ」

いつも鼻息荒く豪語していた父。実際父の運転は抜群に巧(うま)く、かつ安全だった。他人の運転では眠れなかった私も、父の車なら安心して熟睡できた。お蔭で私は歴代の彼氏の運転への採点が辛くなり、口喧嘩の火種が増えてしまった。…だが、この数年、徐々に父の運転に不安を覚え始めた。赤信号で直進しかけたり、前の車にぶつけそうになったり、歩行者に気付かず危うく轢きそうになったり…。

父も既に傘寿間近。判断力も瞬発力も視力も衰えたのだ。心配した私と母は、「パパ、取り返しがつかない事故を起こす前に、運転はもう卒業しようよ」と何度も説得した。だが、父は決して頷かなかった。免許を返納する事は即ち、父の生き甲斐が奪われる事だったから。だから、せめて父が運転する際は、私も極力同乗するように努め、安全に気を配った。

だが、誰よりも父自身が自らの衰えを痛感していたのだ。だから、傘寿を前にけじめをつけ、七十九歳を迎えた今朝、父は宣言した。

「俺の危険な運転のせいで人様の大事な命を奪ってしまう方が、免許を奪われるよりも死んだ方がマシだって事に気づいたんだ。いや、とっくに気付いていたけど、随分と遠回りして、やっと受け入れる心の準備ができたんだ」

父は晴れやかな顔で私と母に告げた。

「最後のドライブだ」と言って、父は母と私を乗せ、免許センターまで愛車を運転した。

「パパ、今までお疲れ様でした! ママと私をいっぱいドライブに連れてってくれてありがとう。これからは私の番だよ! 私がいっぱいいっぱいパパをドライブに連れてってあげるからね! まずは、帰りの運転は私に任せて!」

免許を返納した父を気遣い、明るく労うと、

「三十年早い! お前の運転は下手過ぎて、怖くて乗ってられん。…よーし、じゃあ今日からの俺の生き甲斐は、助手席に乗ってドライバー劣等生をビシバシ、特訓する事に決めた」

憎まれ口を返す父に、思わずムカッ!

…でも、まあ、『鬼教官』として新たな老後の生き甲斐を見つけてくれたなら、それでよしとするか。…と父思いの娘は寛大に許した。

帰りは、私の運転で黄昏の海岸ドライブ。

海へ降りると、両親は並んで浜辺に座った。六十年の車人生の誇りだった金色(ゴールド)免許を自主返納した父を寿(ことほ)ぐように、黄金(こがね)色の夕陽に照らし出されたその背中を私は誇らしく眺めた。

平成30年ファミリー作文コンクール受賞者一覧

[最優秀作]内閣総理大臣賞

(1)小学生の部

5年生 龍道 彩音(茨城県下妻市立上妻小学校)「お互いに守ろう交通安全」

(2)中学生の部

3年生 鈴木 舜(宮城県名取市立みどり台中学校)「孤立をなくす取り組みを」

(3)高校生・一般の部

星野 有加里(宮崎県延岡市)「黄金色(こがねいろ)の背中」

[優秀作]国務大臣・国家公安委員会委員長賞

(1)小学生の部

  • 1年生 𫝆井 伶皇(群馬県渋川市立橘小学校)「ぼくのこうつうあんぜん」
  • 2年生 高橋 悠月(兵庫県明石市立山手小学校)「じてん車は車のなかま」
  • 3年生 甘利 光麗(茨城県龍ケ崎市立馴馬台小学校)「お父さんの自転車教習所」
  • 4年生 出崎 絢菜(石川県七尾市立和倉小学校)「お地ぞうさんとわが家の交通安全」
  • 5年生 平川 智彩(兵庫県高砂市立米田小学校)「登校班での交通安全」
  • 6年生 大峯 健太郎(茨城県水戸市立三の丸小学校)「お年寄りの想い」

(2)中学生の部

  • 1年生 八代 蒼太(徳島県鳴門教育大学付属中学校)「『かも知れない運転』で事故防止」
  • 2年生 千葉 善大(宮城県仙台市立郡山中学校)「歩行者と運転手」
  • 3年生 澤田 舞(栃木県小山市立小山第二中学校)「交通事故で奪われたもの」

(3)高校生・一般の部

  • 川那部 友貴(滋賀県草津市)「職場で交通事故ゼロを目指す」

[優秀作]文部科学大臣賞

(1)小学生の部

  • 2年生 渡部 俊輝(兵庫県加古川市立若宮小学校)「ぼくがまもっているこうつうルール」

(2)中学生の部

  • 3年生 片山 怜(岡山県総社市立総社西中学校)「反射材の大切さ」

(3)高校生・一般の部

  • 寺田 優斗(鹿児島県霧島市)「私の原付運転記」

[佳作]警察庁交通局長賞

(1)小学生の部

1年生
  • 伊藤 知洋(埼玉県蓮田市立黒浜北小学校)「じぶんのいのちは、じぶんでまもる」
  • 永幡 樹一(埼玉県さいたま市立大成小学校)「ちょっとゆっくりでもいいですか?」
  • 多田 奏誉(香川県高松市立仏生山小学校)「あわてない、あわてない、ひとやすみ」
2年生
  • 椙田 雄星(埼玉県飯能市立加治小学校)「色いろなこうつうあん全」
  • 三浦 知晃(兵庫県明石市立花園小学校)「しっかりまもろうこうつうルール」
  • 平木 太一(香川県さぬき市立長尾小学校)「じぶんでまもろうルールといのち」
3年生
  • 室井 まお(栃木県那須塩原市立高林小学校)「交通ルールを守ってくれてありがとう」
  • 髙山 梓希(千葉県市川市立大柏小学校)「『どうぞ』の気持ち」
  • 海老澤 琴芭(富山県射水市立大門小学校)「『交通安全』はまほうの言葉」
4年生
  • 金子 莉菜(茨城県下妻市立豊加美小学校)「とつぜんの出来事」
  • 吉原 馴人(栃木県佐野市立吉水小学校)「言葉のお守り」
  • 椙田 帆夏(埼玉県飯能市立加治小学校)「貴重なかがみ」
5年生
  • 宍戸 祐太(宮城県大崎市立古川第一小学校)「ぼくが事故にあって気付かされたこと」
  • 江原 悠真(茨城県古河市立中央小学校)「命を大切に」
  • 赤尾 萠奈美(岡山県倉敷市立葦高小学校)「私達の交通安全について」
6年生
  • 秋保 泰葉(宮城県仙台市立寺岡小学校)「横断歩道、青信号でも油断するな」
  • 松井 智伸(茨城県守谷市立守谷小学校)「おじいちゃん、僕が遊びに行くよ」
  • 石本 晴人(香川県高松市立弦打小学校)「運転手の目を見よう」

(2)中学生の部

1年生
  • 長沼 栞菜(愛知県一宮市立大和中学校)「命を守る 安全ベルト」
  • 二宮 涼太朗(岡山県倉敷市立庄中学校)「その一言で救われる」
  • 青木 陽幸(徳島県鳴門教育大学付属中学校)「変化していく交通安全」
2年生
  • 市川 奏来(茨城県常総市立石下中学校)「いのち」
  • 小森 稀乃香(栃木県栃木市立都賀中学校)「自転車のルール」
  • 小河原 優希(岡山県倉敷市立南中学校)「安全への第一歩を」
3年生
  • 山木 穂(山形県米沢市立第一中学校)「『こころ』の若葉マーク」
  • 三好 彩心(静岡県静岡市立清水第二中学校)「免許返納を家族で考える」

(3)高校生・一般の部

  • 佐藤 利男(秋田県大仙市)「今日も一日 交通安全」
  • 須田 陽菜(福島県郡山市)「小さな予防」
  • 池田 恭我(宮崎県宮崎市)「助手席運転」
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