「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の施行

「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が5月20日から施行されました。

制定の経緯

この法律は、集団登校中の児童の列に無免許やてんかん持病のある運転者の自動車が突っ込んで多数の死傷者が発生する重大交通事故が相次いで発生したことから、このような事件の厳罰化を求めるご遺族や国民の声に応えるために公布されたものです。

今までは、飲酒運転等、悪質な運転で死傷事故を起こしても刑法の危険運転致死傷罪の要件に該当しないとして、刑罰の軽い自動車運転過失致死傷罪が適用されていた事案が多かったことから、危険運転致死傷罪に新たな類型を追加するなどして、悪質・危険な運転者に対する罰則が強化されました。

概要

○ 第2条(刑法第208条の2に規定されていた「危険運転致死傷罪」をこの法律に移行し、新たに1類型を追加

次の行為により、人を死傷させた場合に適用されます。

アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(新設

罰則 人を死亡させた者は1年以上の懲役(最高20年)、人を負傷させた者は15年以下の懲役

○ 第3条(「危険運転致死傷罪」として新設
アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合
自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれのある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合

罰則 人を死亡させた者は15年以下の懲役、人を負傷させた者は12年以下の懲役

※政令で定める病気

  • 自動車の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する統合失調症・低血糖症・そう鬱病(そう病及び鬱病を含む。)
  • 意識障害又は運動障害をもたらす発作が再発するおそれがあるてんかん(発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)
  • 再発性の失神(脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気であって、発作が再発するおそれがあるものをいう。)
  • 重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
○ 第4条(「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」として新設

アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をした場合

罰則 12年以下の懲役

○ 第5条(「過失運転致死傷罪」、刑法第211条第2項に規定されていた「自動車運転過失致死傷罪」をこの法律に移行し、罪名変更

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者

罰則 7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金

○ 第6条(「無免許運転による刑の加重」を新設

自動車の運転により、人を死傷させた者が無免許であった時は刑が加重されます。

加重による罰則

  • 第2条(③を除く。)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る。)は6月以上の懲役(最高20年)
  • 第3条の罪を犯した者が人を死亡させた者は6月以上の懲役(最高20年)、人を負傷させた者は15年以下の懲役
  • 第4条の罪を犯した者は15年以下の懲役
  • 第5条の罪を犯した者は10年以下の懲役
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