令和2年度交通安全ファミリー作文コンクールの最優秀作品が発表されました。
このコンクールは昭和54年度から実施しており、家庭や学校、職場、地域等において交通安全について話し合ったこと、また、これらを通じて思ったこと、感じたことを作文形式で募集したものです。今回から小学生の部・中学生の部の二部門となり、4,189点の応募作品から選ばれた最優秀作(内閣総理大臣賞)をご紹介します。
(警察庁発行 令和2年度交通安全ファミリー作文コンクール優秀作品集から)
主催 | 警察庁 一般財団法人 全日本交通安全協会 公益財団法人 三井住友海上福祉財団 一般財団法人 日本交通安全教育普及協会 |
---|---|
後援 | 内閣府 文部科学省 |
協賛 | 全国共済農業協同組合連合会(JA共済連) |
小学生の部 最優秀作〈内閣総理大臣賞〉群馬県長野原町立中央小学校4年 小林 朋生
中学生の部 最優秀作〈内閣総理大臣賞〉大分県臼杵市立南中学校2年 白根 美里
群馬県長野原町立中央小学校 4年
小林 朋生
ぼくはおじいさんの先生になる
最近、となりの家のおじいさんは、散歩の回数がふえました。ぼくが学校へ行く時や友達の家へ遊びに行くときに必ず会います。お母さんに聞いたら、
「運転免許証をへんのうしたからだよ。」
と、教えてくれました。「へんのう」とは漢字で「返納」と書くそうです。
おじいさんは今までチョットの用事でも車を使っていたそうです。でも今は歩いてコンビニとか銀行とか、ゆう便局へ行くそうです。だから一人で歩く姿を見かけるようになったのでしょう。歩くと、ちょっときつい遠くへ行く時はバスや電車を利用するそうです。駅までは歩いて三十分もかかるのにどうして運転免許証を返納したのかな。不便じゃないのかなと感じたので、お父さんに聞いてみたら、
「運転免許証の返納は交通安全の一つなんだよ。」
と、教えてくれました。便利な道具は使い方をまちがえると危険な道具になることもあるそうです。
おじいさんの家から駅までは、きつい坂道や階段や車がたくさん走る交差点があります。たぶん、用事をすませて家へ帰ってくるころには空は暗くなるので、駅まで歩きなれていないおじいさんは、無事に家に、帰ってくることが出来るのかなと、いつも心配しています。だからぼくは今度おじいさんの、たん生日がきたら、昼間に熱中症にならないようにぼう子と、夜一人で歩く時は危なくないようにピカピカ光る反しゃするテープと、かい中電灯をプレゼントしてあげようと思ったので、お父さんとお母さんに相だんしたら、さん成してくれました。
ぼくはプレゼントの他にも、おじいさんに、してあげたいことが二つあります。一つはおじいさんに交通ルールを教えてあげることです。車を運転する交通ルールはおじいさんの方が、くわしいけど歩いているときの交通ルールは、ぼくの方が学校の先生や近所の大人の人たちから教わっているので、ぼくのほうがくわしいと思ったからです。二つ目はおじいさんのお友達にも交通ルールを教えてあげたいです。そして、ぼくが大人になったら、みんなに交通ルールを教えることができる仕事をしたいと思います。
大分県臼杵市立南中学校 2年
白根 美里
思いやりの連鎖が生み出す交通安全
国道へと続く片側一車線のまっすぐな一本道。田舎ではあるのですが交通量が多く、またまっすぐな道なのでスピードが出ている車も多いです。私は毎日、この道路を歩いて横断し学校に通っています。
私が渡る横断歩道には信号がなく、渡る時は、車が来ていないタイミングを見計らうか、車に止まってもらわなくてはいけません。渡るために誰かの大事な時間を奪ってしまっていると考えると、あの短い距離でも申し訳なく、私は止まってくれた車に向かって、必ず頭を何度も下げて感謝の気持ちを伝えるようにしています。
ある日のこと、私はいつものように、止まってくれた車に頭を下げていました。するとその車を運転していた人が窓を開け、笑顔で親指を立て「グッドポーズ」をしてくれました。そんなことは初めてのことだったので、驚きました。そして、じわじわとうれしさが込み上げてきました。「気にしなくてもいいよ」、「頭を下げてくれてありがとう」、「気を付けて学校に行くんだよ」あのポーズに、どんな意味が込められていたのかは分かりませんが、いつもの朝とは違うすがすがしい気持ちにさせてくれた出来事でした。
その日、私は学校から家に帰るとすぐに、母にこのことを報告しました。あの感動を誰かに伝えたかったのです。しかし、母からは思いがけない言葉が返ってきました。
「でもね、それって義務なんだよ。」
母によると、運転者は歩行者や自転車が横断しようとしている時には、横断歩道の手前で一時停止をして道を譲らないといけないと法律で決まっているとのこと。詳しく調べてみると、きちんと罰則も決まっていて、違反すれば「三か月以下の懲役又は五万円以下の罰金」が科されることもわかりました。
私は、あんなにうれしかった朝の出来事が義務的なものだったのかと思うと悲しくなりました。しかし、横断歩道で止まってくれる車はほんの一部分で、止まってくれない車の方がとても多いです。片側の車が止まってくれても、もう片方の車が止まってくれず、なかなか渡れなかったり、ぶつかりそうになってひやりとしたりしたことが何度かあります。
そういった状況を考えると、あの朝止まってくれた人は義務を果たそうという思いだけで行動を起こしたのではないと思い直しました。私があれほど感動したのは、止まってくれた人の思いと、感謝の気持ちをこめて頭を下げた私の思い、そしてさらにグッドポーズを返してくれた人の思いがつながった、「思いやりの連鎖」を感じたからだと思います。
事故が起こらないように考えられた義務ですが、それ以上に交通安全のために大切なのは相手を思いやる気持ちだと思います。私はこれからも安全に気を付けて横断歩道を渡り、止まってくれた人に「止まってよかったな」と思ってもらえるように、笑顔で頭を下げていきます。
4年生 小林 朋生(群馬県長野原町立中央小学校)「ぼくはおじいさんの先生になる」
2年生 白根 美里(大分県臼杵市立南中学校)「思いやりの連鎖が生み出す交通安全」