令和3年度交通安全ファミリー作文コンクールの最優秀作品が発表されました。
このコンクールは昭和54年度から実施しており、家庭や学校、職場、地域等において交通安全について話し合ったこと、また、これらを通じて思ったこと、感じたことを作文形式で募集したものです。小学生の部・中学生の部の二部門となり、4,892点の応募作品から選ばれた最優秀作(内閣総理大臣賞)をご紹介します。
主催 | 警察庁 一般財団法人 全日本交通安全協会 公益財団法人 三井住友海上福祉財団 一般財団法人 日本交通安全教育普及協会 |
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後援 | 内閣府 文部科学省 |
協賛 | 全国共済農業協同組合連合会(JA共済連) |
岡山県倉敷市立琴浦東小学校 5年
明石 仁美
できることから始めよう
あれは確か六月の終わり頃、夕食の時に家族でテレビをみている時、悲しいニュースを知りました。その時、お母さんは、テレビの前で大の字のポーズに背を向け、私と弟にそのニュースを見せないようにしました。私は、
「ママのいて。え?何があったん?」
と言って、お母さんの大の字になった手を、ひっぱりました。
そのニュースは、千葉県でトラックが、下校途中の小学生の列に突っ込んで、小学生の二人が亡くなり、一人が重体、また二人も大けがしたニュースでした。しかも、運転していた人は、お酒を飲んでいたにもかかわらず運転し、事故を起こしたそうです。
その時、家族のみんなの顔がこおりつきました。しばらく何も話せなくなりました。
しばらくして、
「こわかったね。つらいね。」
と、その後も言葉になりませんでした。
翌朝、いつものように私と弟は小学校へ出発し、いつものようにお母さんは、
「右左、よく見て気を付けて行くんよ。ちゃんとごあいさつするんよ。」
の後に、集合場所まで何も言わずついて来てくれました。別れぎわに、お母さんは、
「交通事故に気をつけて。車は急に止まらないから、副班長の仁美が、みんなを守ってあげるのよ。」
と言って、手をふりましたが、ふり返ると、お母さんは、いつまでも私達の後ろ姿を、心配そうに見送っていました。
私は、その日交通安全のことを考えながら登校し、いつも以上に車の動きに注意しました。
朝は忙しいから、車のスピードもやっぱり、速いことに気づきました。それなら、私は止まろうと思いました。まず、絶対止まる!!!の黄色の足マーク探しをしました。私の家から学校まで、四つのマークを発見しました。思い出すと、一年生の頃、お母さんとこのマークに一緒に足を合わせて、
「絶対止まる。」
と大きな声で言って、帰っていたことを思い出しました。私は、はっとしました。五年生になって、学校生活にもなれ、色々なことがだんだん当たり前になってしまっていることに…。しかも、その一番危険な黄色い足マークの所には、安全パトロール隊の緑のおじちゃん、おばちゃん達が毎日立ってくださっていることにも…。危険な場所に、自分の身をおいて、私達のことを守ってくださっていることも。あれから、家族でもたくさん交通安全について、話し合いをしました。毎日、お母さんは帰ると合い言葉のように、私と弟に、
「おかえり。ちゃんと黄色の止まれで止まった?ちゃんと、あいさつおれいが言えた?」
と、聞きます。私は、前までは、毎日同じことを何回も言われなくてもわかってる、と思っていましたが、もう当たり前はやめました。
これからは、登下校中もみんなの命が歩いているから気を付けようという気持ちと、パトロール隊の方々への感謝の気持ちを忘れず、笑顔で気持ちの良いあいさつを続けていこうと思います。まずは、自分のできることから始めることが、安全への第一歩につながるということを信じて…。
小学生の部 最優秀作〈内閣総理大臣賞〉岡山県倉敷市立琴浦東小学校5年 明石 仁美さん
千葉県千葉大学教育学部附属中学校 2年
草場 美海
大切な人を守るために
何が起こったのかわからなかった。襲ってきた衝撃、窓ガラスの割れる音、母の叫び声。少し間をおいて、私はやっと車がぶつかってきたのだと気が付いた。初めての状況に頭も気持ちも追い付かず、私はただ車のシートに座ったまま、泣くこともなく呆然としていた。
私は五歳のとき、母と弟と三人で車に乗っていて、交通事故に遭った。買い物帰り、通り慣れた道、本当ならもうすぐ家に着くはずだった。前を走るバイクが右折するために減速、母もそれに合わせて減速した。しかし後ろの乗用車はスピードを緩めず、そのままぶつかってきた。車は大破したが、幸い私達は軽傷で済んだ。それは、チャイルドシートやシートベルトを正しく使用していたからだと思う。
当時二歳だった弟は、チャイルドシートに縛りつけられるのが嫌で、泣き叫んで暴れたり抜け出したりすることが多かった。そのため母は、弟がチャイルドシートを正しく使っていない状態でも運転を続けることがしばしばあった。しかしあるとき、普段は穏やかな父が、チャイルドシートを抜け出した弟のことを真剣な口調で叱った。そして、
「チャイルドシートをしないなら車に乗せない。」
と言い弟を抱え上げ、車から降ろした。それから、弟がチャイルドシートを嫌がることはなくなった。事故の一週間前のことだった。もしあのとき父が叱っていなかったら、弟は事故のときにもベルトを正しく装着しておらず、大怪我をしていたかもしれない。
ここ五年間の警察庁の調査によると、六歳未満幼児がチャイルドシートを使わなかった場合、死傷者数に占める死者数の割合は〇・三九%であった。これは、チャイルドシート適正使用時の約八倍である。一方、高速道路で後部座席のシートベルトをしなかった場合、致死率は四・一八%と着用時の約二十倍であった。チャイルドシートやシートベルトをしないと、事故の致死率が大幅に上がるのだ。事故はいつどこで起きるかわからない。少しの移動でも、自らが安全運転をしていても、起きてしまう事故はある。だから、車に乗る全員が正しくチャイルドシートやシートベルトを着用することが大切だ。そうすることできっと、自動車事故の死傷者を減らすことができる。
私達が事故に遭ったとき、父は側にいなかった。しかし、あのとき弟を助けたのは父だ。父の言葉が、想いが、弟を守った。だから私も父のように、シートベルトやチャイルドシートの大切さを周りの人に伝えていきたい。そう思って私は今、この作文を書いている。そしてこの作文を読んでくれたあなたにも、シートベルトやチャイルドシートの大切さを周りの人に伝えて欲しい。あなたの大切な人が交通事故に遭って、「シートベルトをしていたら・・・。」と後悔することがないように。
あなたの言葉や想いにも、その人を守る力がきっとあるはずだ。
中学生の部 最優秀作〈内閣総理大臣賞〉千葉県千葉大学教育学部附属中学校2年 草場 美海さん
5年生 明石 仁美(岡山県倉敷市立琴浦東小学校)「できることから始めよう」
2年生 草場 美海(千葉県千葉大学教育学部附属中学校)「大切な人を守るために」